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北欧編㊦ 国家の生き方の選択 

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 <後日談>

新型コロナウイルスの感染拡大に際し、スウェーデンは国家として唯一、初期の感染データから「重症化や死亡のリスクは相対的に低い」との判断から、マスクの着用や外出の自粛といった予防策を取らず、従来通りの生活習慣を継続し、「多くの国民が早期に感染して、集団免疫の獲得で乗り切る」という方策を選択しました。しかし、英国型の感染が欧州各国で拡大するに至り、方針を転換し「新常態の生活様式」を受け入れることになりました。

日本は、感染拡大の制御と経済活動の両立を目指し、緊急事態宣言やまん延防止策による外出抑制の一方、強く影響を受ける業種に対する補助金を拠出することで乗り切ることにしました。中国や欧州で実施された「ロックダウン(都市封鎖)」による外出の完全禁止は、政府によるいかなる私権の制限を容認しないことを前提にしている、現下の日本の法制では、感染防止対策としては有効であると分かっていても、実施は困難だったのでしょう。仮に政府が法律の変更を企図してとしても(それが臨時の特措法であっても)、言論の自由に対する制限や、戦時下の徴兵を可能ならしむる根拠法になりかねないと、先の大戦に基づく経験による懸念から、きっと法制化できなかったでしょう。

結果としては、感染拡大の影響を受けた業種に対する経済支援により、日本の公的債務は大幅に増大し、また来月に迫った東京オリンピックは、当初期待したような経済効果はもはや実現できず、大会を実施するかどうかに関わらず、準備のための莫大な支出のみが今後の負担として残ることが明確になりました。

紆余曲折はありながらも、ようやく進み始めたワクチン接種により、遠くない日に新型コロナウイルスに対する集団免疫を獲得して、かつての日常が戻ってくることと思いますが、同時に様々なことが以前とは違ってきて、感染終息後の世界で多方面に影響が残ることになるのでしょう。

新型コロナウイルス感染拡大に関わる重要な舞台となった、医療の世界における一連の出来事からは、「私たちの社会には巧みに配された多くの権益が存在し、それを守り永続させることを目的にした強固な利益代表組織が非常な力を持っている」ということが、あらためて浮かび上がったと思います。

後世から振り返って見た時に、この「コロナ禍」は、別項で触れた「社会の二極分化」に至る契機のひとつであった、と認識されるに違いありません。

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